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限界電流型酸素センサーの作動原理

  • 管理者 (nanoionicsjp)
  • 2019-04-03 11:56:00
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 (図 1) 限界電流型酸素センサー概略図

 

酸素イオン伝導体であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の両端に電極を構成して電圧を印加する場合、以下の反応と共に酸素気体は陰極(cathode)で電子と反応して酸素イオンに還元され

 

 

還元された酸素イオンは酸素イオン伝導体である YSZを通じて移動し、以下の反応と共に陽極(anode)で再び酸素気体によって酸化される過程を経て酸素が陰極から陽極にポンピングされます。

 

 

ここで (図 1)のように陰極の方に拡散障壁を附着し電圧をかけると、ポンピングセル表面では酸素気体が陽極側に抜けていくようになり、拡散気孔(diffusion hole)を通じてポンピングセル表面で Fick's 1st lawによる酸素気体の拡散が起きるようになります。 この時にポンピングセルの酸素ポンピング量が拡散気孔を通じて拡散して入って来る酸素気体の量より充分に大きければ、拡散気孔を通じた酸素気体の拡散過程が律速段階(rate determining step)になり、このように酸素のポンピング量が酸素の拡散によって制限されるのを限界電流(limiting current)と言います。

 

図2はポンピングセルにおける電圧の大きさによる電流の変化を概略的に現わしたものです。このような電圧電流曲線は大きく3部分に分けることができます。 
領域 (I)では酸素のポンピング量が拡散気孔で起きる酸素の拡散量より小さいために、印加電圧の大きさが増加するほど酸素のポンピング量が線形的に増加するようになります。この時の傾きは、電極及び固体電解質の抵抗によって決定されます。

 

領域 (II)では酸素のポンピング量が酸素の拡散量によって決定されるので、印加電圧の大きさに関係なく電流の大きさは一定になります。 
このような限界電流領域においては酸素の拡散量は先に言及したように拡散気孔を通じたチャンバー内外部の酸素濃度差に比例し、チャンバー内部の酸素濃度は外部の酸素濃度に比べて無視するほど小さいので、限界電流の大きさは酸素の濃度に比例するようになります。したがって、このような限界電流現象を利用して酸素の濃度を測定することが可能です。

 

(図 2) 限界電流型酸素センサーの電圧-電流特性

 

領域 (III)のように、印加電圧がより大きくなると、YSZ 固体電解質が電気分解されて酸素イオンの濃度が大きくなるので、再び電流量が大きくなります。

 

拡散気孔を通じた拡散の場合、拡散気孔の大きさに従い正常(normal) 拡散と Knudsen 拡散の2つに分けられます。 
拡散気孔の大きさが気体の平均自由経路(mean free path)より非常に大きい時には気体の拡散が気孔外壁の影響を受けずに気体分子間の衝突により大きな影響を受けるようになり、この時を正常拡散と言います。拡散気孔の大きさが気体の平均自由経路より非常に小さければ、気体間の影響よりは気体と拡散障壁の間の影響が拡散に影響を与えるようになり、この時を Knudsen 拡散と言います。

 

ここで λは気体の平均自由経路、dは拡散気孔の直径を意味します。

普通この2つの拡散は上記のように表現される Knudsen 数(Knudsen number)、Kn によって決定されることができます。

 

Kn≫1 : Knudsen 拡散     

 Kn≪1:  正常 拡散

 

.

(表1) Knudsen 拡散と正常拡散による限界電流比較

 

(表1)のように Knudsen 拡散による酸素センサーは一定の電圧を印加した時に限界電流の大きさが酸素濃度(酸素分圧)と正比例関係として現われます。

 

限界電流型酸素センサーは液体電解質型電気化学酸素センサー(electrochemical oxygen sensor)の問題点である蒸発による電解質消失が発生せず使用可能寿命が相対的に長いという長所があります。一方、電圧測定型ジルコニア酸素センサー(zirconia oxygen sensor)と比べると、基準電極が不必要なので、小さな素子形態での製作が可能です。また、高い酸素濃度領域では酸素濃度変化量に比べてセンサー出力信号変化量がジルコニア型酸素センサーよりも相対的により大きいので、より精緻な測定が可能という長所があります。

 

 

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